豪華客船《飛鳥Ⅱ》船上映画事情

 

  先日、半ば強制的に家族に誘われて身の丈知らずの豪華客船≪飛鳥Ⅱ≫に乗船、九州日南に向けての三泊四日の花火見学ツアーに参加して来ました。その時の体験を基に今回は息抜きを兼ねた番外編として、≪飛鳥Ⅱ≫船内の映画事情を報告したいと思います。  

 

   船内で映画を見る方法は二つあります。一つ目は6デッキ中央に設けられている船上映画館【ハリウッドシアター】での鑑賞。も一つは船室内でのテレビでの視聴です。

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  まずは【ハリウッドシアター】。座席数はざっと見まわしたところ200強位。もう少し多かったでしょうか。座席はもう豪華仕様で尚且つ前の座席との間隔が十分開いているので座り心地は満点。毎日配布される船内新聞「ASUKA DAILY アスカデイリー」で作品と上映開始時間の紹介があり、夕方から深夜にかけて食事時間に支障がないように同一作品が二度上映されます。 

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  今回の乗船第一日目には北野武監督による話題作「龍三と七人の子分たち」(2015年)の上映があり、新作公開の時にすでに見ていた作品でしたが夕食の後、22時からの回でふたたび鑑賞。前回観た時は期待が大きかったせいか今一つの印象でしたが、今回は内容が分かっているのであまり期待していなかったのが良かったものか、驚くほど楽しめました。北野武の笑わせ方やギャグが細かすぎて観客が置き去りにされかねない危惧のある作品ですね。その点二度目だったので、落ち着いて作品に向かい合うことが出来たのが余計に楽しめた原因だったかも。敵対するチンピラの事務所での攻防の際、単身の殴り込みで前日に殺されてしまった中尾彬の死体が敵味方双方の凶弾を浴びなぶりものにされるブラックなシーンなどに大笑いしていました。

  二日目の上映作品は「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」(2014年)。夜になると展示物が動き出す博物館のコメディシリーズ三作目です。

    三日目最後の日は原田眞人監督による「日本のいちばん長い日」(2015年)の上映がありました。 

日本のいちばん長い日 [DVD]

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    二日目の夜も劇場に出掛けようと思ってはいたのですが、その少し前の時間からテレビで「男はつらいよ・寅次郎サラダ記念日」(1988年)の放映があり、結果的にこちらも何回目だったのですが、部屋でゴロゴロしながら寅さんと最後まで付き合うことになってしまいました。シリーズ40作目でマドンナは女医さん役の三田佳子でもう一人三田寛子がヒロイン役で客演。俵万智の短歌集を基にしたような内容で舞台は小諸、早稲田大学で寅さんが講義を受けるシーンが面白かったですね。

 

第40作 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 HDリマスター版 [DVD]

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サラダ記念日

サラダ記念日

 

  【ハリウッドシアター】で上映される作品の多くは、このように誰でもが楽しめる娯楽映画が多いようです。何年か振りに映画を見るような人もいるはずですので、当然と言えば当然です。

    以前乗船した際には、「釣りバカ日誌」シリーズの何作目かを上映していましたし、メリル・ストリーブ主演のコメディ・ミュージカル「マンマ・ミーア!」の時もたしかありました。「釣りバカ日誌」シリーズというと観光バスの車内で見る機会が多いように思いますが、ハマちゃんとスーさんの掛け合いは誰が見ても無難で面白いので団体客対象の映画としては重宝がられているのでしょうね。

    そんな飛鳥の映画チョイスで、今回三日目の「日本のいちばん長い日」の上映にはちょっと驚きました。船内の作品としてはいつになく重い内容のものだったからです。が、これが予想外の感心を集めていたみたいで初日の北野作品とは比べものにならない位の賑わいでビックリ。

   この作品は劇場公開時には見ておらず、今回が初見だったので満を持しての鑑賞。前方二列目の脇の方の席に陣取りました。隣りに誰か来ると注意散漫になるため、自ら少々見づらい座席に座るのがオレ流(?)の映画鑑賞のスタイルです。すぐ後ろの列から刻々と席が埋まりはじめたので正解でした。この作品は力作ではあったのですが話の展開が急激であり過ぎて、映画を見慣れていない観客には分かりづらい内容だったのでは。太平洋戦争終結時の歴史に詳しければともかく、内容が盛り沢山でありすぎて2時間ちょっとの上映時間ではもう少し整理が必要だったのではというのが今の僕の感想です。でも珍しく大人向けの作品で、撮影や俳優陣の頑張りは印象に残っています。特に昭和天皇を演じた本木雅弘の役作りは、難しかったはずなのに見事なものでした。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

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   【ハリウッドシアター】まで出向かなくても室内のテレビでは終日、何らかの映画は放映されており部屋でも十分に楽しむことが出来ます。10チャンネルでは日替わりで飛鳥独自で拾い上げた作品なのか二本の映画が三時間ごとに放映になり、前述の「寅次郎サラダ記念日」はこのチャンネルで見たものです。ここ以外に既成の有料映画チャンネル二つも受信されていて、もちろん無料で見られます。6チャンネルの「イマジカBS・映画」や9チャンネルの「チャンネルNECO」がそれで、石原裕次郎主演の「影狩り」とか「ターミネーター2」とかがこの期間、これらのチャンネルでとっかえひっかえ放映になっていました。今回は空き時間を作ることが出来ず、残念ながらチャンネルを合わせることは出来ませんでしたが、まさに見放題状態。NHKのBS番組も一般放送共々見られますのでご心配なく。

 

  船旅とはいえ、のんびりとは出来ないのが映画ファンの性分。もう少しいろんなモノを飲み食い出来たのではと思うのと同じくらい、もう少し色々な映画が見られたのではと少々後悔の日々を送っています。次回の乗船はいつになるか分からない豪華旅行ですが、もし次があるようならしっかり計画を立てて最良の映画鑑賞をしたいと思っています。映画を見て、食べて、飲んで(僕の場合は、ソフトドリンクです)、孫と遊んだ夢のような四日間にわたる「飛鳥Ⅱ」乗船映画レポートでした。

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 最近観た映画の中では「ブルックリン」が一押しです。


映画『ブルックリン』インタビュー映像


映画『ブルックリン』予告編

   ニューヨークのブルックリン地区が移民の居住地域ということをこの映画で初めて知りました。1950年代の不況の折に家族と離れ単身、仕事を求めアイルランドから米国に渡ったヒロインの愛と成長の物語と言ったら良いのでしょうか。一件メロドラマ風な設定であっても主人公を演じる女優さんやそれぞれの描写に品位があり見応えが十分。二回アメリカへ渡航させる仕掛けも巧みで、二つの幸せの狭間、故国と愛との選択に心を痛めるヒロイン像がすこぶる新鮮、つらい決断を下した後のラスト・シーンでは涙が禁じ得ませんでした。映画を見る機会が少ない人にも勿論映画ファンにも胸を張って薦めることが出来る一作です。